Stepp IR DB18E
多くのバンドにQRVしたいが、たくさんのアンテナでは受風面積や重量が無理、またアンテナ間の干渉が出る、台風が心配、というような悩みの中で、私のANT選択のプライオリティは以下でした。
①3.5-28MHzまですべてのバンドでCW/DIG/SSBに出たい
②少なくとも10MHz、できれば7MHzまでビームアンテナにしたい
③大きさは回転半径7m程度まで(以前は20mの4エレモノバンドのCL20、15mの5エレHB9CVとForce21の30/17/12mに2/2/3エレのWARC7でした)
この条件だと、7/10の2バンド八木と14以上のマルチバンド八木の組み合わせか、7/14/21と10/18/24の八木の組み合わせがありますが、③の条件が厳しく、受風面積もかなり大きくなります。また特にバンド幅の広い7/14等のクラシックバンドでの性能が気になります。そうすると、費用面では不利なVersaBeamかSteppIRからの選択ということになります。本当は4エレ以上欲しいので7/10DPの4エレか、7/10もビームの3エレの選択肢で、7/10のビームが捨てがたく、結局、大体同じような性能と思われるKA1-403SとDB18Eの二つに候補を絞りました。最終選択の分かれ道は、一つは回転半径、もう一つはコントローラーをLogger32からでも操作できるなどの使い勝手、で、値段は高めで悩ましいところでしたが、SteppIRのDB18Eにしました。75/80mをCD78jrでカバーする組み合わせです。
DB18Eは23m高のクランクアップに乗せて、その上にCD78jrです。6mの6エレと2mの9エレスタックが、もう一つのタワーにあります。因みに、2つのタワーもSteppIR以外のすべてのアンテナ・ローテーターも中古です。最近は、QRTする方も多いようで、タワー建設業者に探してもらうと多少待ち時間がありますが、撤去依頼のタワーやアンテナが見つかるようです。
ANTはこれまで、DP、3エレCQ、マルチバンド八木、モノバンド八木など変えてきましたが、WARCバンドはまだしも、バンド幅の広いクラシックバンドは、マルチバンド多エレメントの短縮八木はカタログ性能はなかなか出ない(設計中心周波数近くは良いが)ので、ターゲットのバンドを絞るか、CWかSSBにモードを絞るか、またはCQか、そしてSteppIRのようなANTということになるでしょうか。CQは20mまでフルサイズでバンド幅も取れ、狭い敷地にも設置でき素晴らしいANTですが、風に弱くて壊れやすいので維持がとても大変でした。因みに、私は、Raエレメントがマストに近くメンテし易い、3エレ5バンドのCQを暫く使っていました。性能には満足していましたが、良い状態を維持するのに頻繁なタワーの上り下りは大変で、結局八木に変えてしまいました。
DB18Eを使用し始めての感想は概ね期待に沿ったもので、タワーの上にモノバンドの八木を乗せているイメージの通りで満足しています。
①7/10MHzは、ビームとしての性能は十分高い感じがする。FB、サイドの切れもはっきり分かる。このANTの30mは3エレ動作で、このブーム長ではたいした性能は出ないかと思っていたが、意外と良く、他局の送るリポートと比べて悪くない、と満足している。BY等からの強いQRN/Mがあるときに北東のNA方向に向けると、影響はかなり軽減され、弱い東海岸やカリブの信号をピックアップできることを実感できた。また、7MHzもFT8で他局が受信で苦戦している信号が良く見える場面もあって、ビームのゲインの恩恵を感じることが少なくない。まだ短期間の使用なのでさらに評価が必要だが、PSKレポーターで、ある日の40mで、W局等にはJAからたくさんCALLしている中で、CONDX等による偶然もあっただろうが、CQを連発しているカリブ局を呼ぶのが自分だけだった、ということもあった。
②14MHz以上は3エレはやや物足りない(以前のCL20と比べても)と感じることはあるが、普通のCONDXなら、それなりに聞こえ、サイドの切れもFBも十分感じられるので、大きさやマルチバンドのメリットからすれば納得。上を見ればきりがない。ハイバンドでは自分の受信している信号SNRが、他局が送るdBより悪いこともしばしばある。ハイバンドで他局より良い耳を持つには、10m以上のブーム長にフルサイズ4-5エレ以上は必要だろう。
③チューニングまでの時間は隣のバンドとの行き来なら、気にならない時間だが、Calibrateを掛けると2-3分は待たなくてはいけない。FBの切り替えや50KHzぐらい動いた時の微調整はほんの2-3秒。思っていたよりも早い印象。180度反転モードはとても便利。SP/LPだけでなく、EUに向けてすぐに切り替えてVKを呼ぶとか、北米に向けていて中東・AFを呼ぶとか、という場面では、アンテナを180度回しても3エレなので、ほとんど信号は変わらないのでフロントバック気にせず使っている。180度反転を使いローテーターの回転は北側半分だけになってきている。
隣のタワーの6mの八木でFT8を聞いていると、DB18Eのエレメントを巻き込む(Retractする)と、SNRが良くなる、という現象があり、クランクをダウンして6mの八木から10m近く下げていても影響があることがわかり、使っていないときはエレメントは巻き取った状態にしている。
④どのバンドでもSWRが気にならず、ビームパターンがバンド内のどこにいても保たれるのは、大きなメリット。(このために高いお金を出していると言えるが)ハイバンドは特性がブロードで、周波数をそれほどこまめに変えなくてもSWRは変わらず、CWとSSBぐらいの変更だが、40mは50KHz毎ぐらいでエレメント長の変更が必要。タワーを下げて12-3mぐらいになると、40mはSWRが1.4-1.6ぐらいに上がる。短縮コイルがないので、パワーが熱になっていない、というのも気持ちの問題ですがプラスかと。
⑤耐久性は長く使わないと分からず、台風などの影響も今後分かってくると思うが、エレメントを巻き込んでおけば、ただのグラスファイバーのパイプなので、強風ではエレメントがかなり曲がっているように見えても、ダメージは無いはず、と期待。アメリカにいた時にハムフェアに行って、フロリダなどハリケーンの多い地域で、普通のアンテナが破損してもSteppIRは無傷、という話を聞いた。モーターとエレメント、7MHzの給電のリレー等にトラブルが出ないことを願っているが、これから見ていきたい。
モーター音は、地上でも聞こえる。室内までは聞こえないが、特に最初に格納しているエレメントを出すときなどはある程度の時間、ヒューンという音が続くので、やや気になるかもしれない。
⑥バンド・周波数の切り替えは、リグのCATの信号をLogger32に渡し、Logger32からCOM PORT出力を指定してコントローラーに出している。メリットは、2台のリグをLogger32で切り替えて使えること。Logger32を立ち上げないと使えないことがデメリット、ということかもしれないが、Logger32をいつも使っているので問題なく、Logger32からRetractや180度切替、周波数の微調整などの操作も出来る。VersaBeamに対するメリットと言えるのではないか?(VersaBeamを複数のリグで切り替える場合は、皆さんマニュアル操作で対応されているのでしょうか?)
幸い、畑の真ん中のロケーションで、近所の家と隣接はしておらず多少距離があるが、ブーム長6m弱とはいえ、巨大なトンボみたいなエレメントの形で、特にクランクダウンして地上に近い状態だと、かなり大きい印象で目立つのは事実と思う。ファイバーが黒で太さも結構あり、且つ2本づつなので、写真のように、普通のアルミのエレメントよりも空や雲を背景にはっきりと見える。(アルミのエレメントの方が、背景に溶け込んで目立たない印象。)
一つ問題(かもしれない)は、組み立てが結構大変、ということで、DB18Eはあまり経験がない、というプロの業者さんからも、大変で時間がかかった、と言われた。この点は工人舎の方が容易、とは業者さんのコメント。今のところ、上げてからはノントラブルで、結果、満足している。因みに納期はBeam Questさんへのメールでの注文から納入まで1か月。アメリカからの輸入としてはとても早いと思った。Beam Questの土佐さんのサービスは定評があるようで、親切・迅速ですね。
Logger32での操作について
2台のRIGとの周波数の連携に、Logger32のVSCを使っています。Logger32で選択したRIGのCATで、VSCからRIGの機種に関係なく、DB18Eをコントロールできます。JA1NLXさんのHP(下のLINK)に設定などの説明があり、この通りの設定でつなげることが出来ました。気を付けること(HPにも記載されていますが)は、①RS232Cのケーブルは、クロスケーブル(ストレートではありません。Beam Questから購入時にリグでなくPC接続と指定すれば付いてきますが、RS232C-USB変換ケーブルを自分で用意する場合は要注意)、②接続する端子は、DATA OUT(下の端子)で、DATA IN(上の端子)は接続なし。③COMのSettingで Databits: 8、 StopBits: 2、Parity None。よくあるStopBitsの設定では1の設定が多いので間違えないように。④設定時のSDA100のRIG機種選択は何でもよい(KENWOODにしていますが)、というようなところでしょうか。
http://ja1nlx.web.fc2.com/logger32_japaneseHelp/VirtualSteppIRControllerVSC.html
Logger32のVSCを使うと、SDA100に全く触れる必要はなくなるので、手の届かない棚の上に置くことが出来ますが、一つ面倒なのは、電源を入れることを毎回必要なことで、大したことではないですが、ケースを空けて電源SWの後ろから線を引き、別に使っているI/Oボードにつなげて、SWのON/OFFもPCから操作できるようにしました。